契約内容と異なり裁判沙汰に!大手住宅メーカーによる手抜き塗装:一級塗装技能士の解説シリーズ vol.02
ご相談の経緯
大手住宅メーカーで外壁塗装工事を行ったら、普通では考えられない施工になってしまったので見てほしいという相談メールが弊社塗装職人宛に届きました。
協会理事・塗装職人社長 曽根と見積もり担当・現場管理・松尾が伺い、驚愕の施工内容を聞きました。
契約書と実際の施工の相違
よろしくお願いします。どんな工事を行ったのですか?
契約書と違う塗料で勝手に塗られてしまったんです。契約書では、中塗りシリコン・上塗りシリコンのはずが、中塗りアクリル・上塗りシリコンで塗られてしまいました。
なるほど、下塗りの後に中塗りがシリコンのはずが、アクリルで塗られてしまったんですね。
はい、そうです。中塗りがアクリルだとしても上塗りのシリコンで全てカバー出来ていれば、耐久性はそこまで心配しなくてもいいかな、と思います。果たして本当に上塗りのシリコンでひと塗りしただけで全面をカバーできているのかが疑問です。一番許せなくて納得出来ないのは、何の断りもなく勝手に塗料を変えて塗られてしまったことです。
どうして勝手にアクリル塗料で塗られてしまったのでしょうか?
業者の言い分としては、ヘアークラックと言われる細かいひび割れが沢山あったので、それをカバーするためにアクリルで厚みを持たせて、現場判断でアクリルからシリコンに変更したということのようです。ちなみに、アクリルもシリコンも塗った厚みは変わらないそうです。
そんな言い訳は納得できないなという風に思っています。しかも、既に塗り終わって2ヶ月経たないうちから、もうひび割れが出ています。
たしかにそうですね。
施工を依頼した経緯
施工を依頼した経緯を教えてください。
元々外壁塗装を依頼したのは雨漏りが原因で、窓枠の上のところから雨が落ちてきていたんです。(業者に見てもらい)見た限りでは、ひび割れが雨漏りの原因と特定はできないけど、シーリングか塗膜の件(補修)で塗装することになりました。
クラックに関してはおそらくアクリルが原因ではないと思います。実際に確認することはできますか?
ここが後でやってもらったところです。色が違うところです。ここは補修済みです。
ええと・・・これで終了ですか?色は塗らなかったんでしょうか?補修材の上から。補修の後に塗りに来ます、ということになっているわけではないんですね?
これで終了ということです。酷くないですか?なんかゴムみたいになってます。普通は外壁と同じ塗料で補修を仕上げるものではないんでしょうか?
その通りです。
そうですよね。ですので、色が違うし、ゴムっぽくなっています。
クラック対応なのでゴムっぽいのは問題ないかと思います。ただし、仕上げで色を同色にしないといけませんね。
塗料の違いに気づいた経緯
契約書の塗料と実際の塗料が違うと気づいた経緯を教えてください。
最終日に塗料缶を全て破棄するので、(並んでいた)塗料缶を見て気づきました。私が気づかなかったらそのまま終わっていたんだろうな、という感じです。
なるほど、それはまずいですね。
本当にうちの事を思って(補修を)してくれたという風には受け取れません。
足場解体時にもトラブル発生
離れて見て頂くと、おへそのようにへこんでいるの分かりますか?
あー、へこんでいますね。真ん中とこっちが。
足場解体時にも色々とトラブルがありまして、ここ当たったんじゃないの?とか、タイルも割れていたんです。ボンドで付けたんですけど。
契約内容があっさりと反故にされる
基礎を掘って塗るという契約になってたんですけど、掘って塗ってなかったりとか。今は見えないように砂利を敷いています。
でも、これは塗ってありますよね?もうちょっと掘ってから塗るという契約だったということでしょうか?
ここが陥没してたんですね、地盤沈下で。土のところは5~6cm掘って塗りますということだったんですが、塗り終わった直後に見ると、地面から5mm~1cmくらい塗っていないと分かって、「あれ?これは掘って塗ってくれてないんじゃないのかな?」ということや、塗り残しもありました。
ここに関して言った時も、「最初から割れてなかったですか?」という風に言われて、ちょうど写真があったので、「いや、この日付で割れてないですよね?しかも足場の四角い跡がくっきり付いてますよね?」ということで直してはくれたんですが。
なるほど。それはお客様にも業者にも言えることで、工事前に(写真を)撮っておく方が良いんですよね(トラブル防止のため)。(お客様からすると)言わなければ対応してくれないのか、と思ってしまっても仕方ありません。本来は業者の方から言った方が良いはずです。
吹き付け塗装で気になるところ
前回ガイナ(塗料)を塗った時には1日1吹きしかしなかったんです。それは4月だったんですが。今回の業者さんが塗ったのは1月の3連休の寒い日だったんですけど、中塗りをたった1日で3回吹き付けてますということだったんです。
冬だから乾くのには当然時間かかりますよね。乾いていないところに上から吹き付けているはずです。中塗りを今日1日で3回吹き付けて、その翌日に最後に仕上げで一吹きしますと言っていました。
それは、乾いていませんね。
乾いていないんじゃないかなと思ってるんですけど、証拠も残っていませんし。
(施工の日の)気温が分かれば科学的に証明できるとは思います。毎日の報告書は受け取っていましたか?
受け取っていません。口頭で報告を受けていました。写真も残されていません。
なるほど、報告書があれば良かったんですが。ただ、1日3工程は物理的にできないはずです。乾いてないはずです。
夏場でもですか?
3工程では、夏場でも厳しいと思います。全てが乾くわけではないんです。夏場の場合、表面については乾くかもしれません。ただし、このように構造的に入り組んだところは夏場でも乾きません。
業者の今後の対応
業者は足場を組んで塗り直すと言っているんでしょうか?
いえ、一番最初の話し合いで、それはまだ足場があった時に気づいて話していたので・・・
それでは、(足場を)解体してからは、お金を払わないとやってくれないということですね?
そうです。最初に、アクリルとシリコンの差額分だけを減額するという提案だったんですけど、それでは納得できません。頼んでいない工事を勝手にしていて、じゃあ何のための契約書なんですか、と思っています。
その差額分をもしやるとしたら、足場を架けないといけないわけですしね。足場を架ける、養生をする、シーラーを塗る、それだけ(差額分だけ)では済まないと思います。ただ、しばらくは大丈夫だと思います。
雨漏りさえしなければ・・・
えっ!?
施工後も止まらない雨漏り
窓の上の部分と1階と2階の間の継ぎ目のシーリングのところの、ちょうど角のあたりですかね。こっち側のところから(水が)落ちてきてたので。壁がびちょびちょだったんです。今、壁紙全部を剥がして乾かしてる状態です。もうペロッてめくれてしまうくらいにびしょびしょで。
なるほど、内装のクロスが。それが、今はおさまっているということですね?
そうなんです。ここ最近、夏ですし晴れていたので乾燥はしてきていて、少しくらいの雨なら大丈夫なんですけど、結構大雨が続くと色が濃くなり、触ると湿っているような気がするんです。つまり、水は弱いところに流れて行くと思いますが、防水がきちんとできていないのではないかなと思います。
いまだに、ということでしょうか?
いまだになんです。2~3日前に雨が続きましたが、色が・・・見て頂いた方が分かりますかね。薄いところと濃いところがあって、薄いところは乾いているんですが、濃いところが雨が降るともうちょっと濃くなって、触ると湿っているような気がします。雨漏りでしょうか?
雨漏りかと思います。真冬ではないので結露では無いだろうし・・・、どこか染みてるのかもしれません。
雨漏りの原因は?
あそこの枠のところに隙間がありますよね。なぜ埋めてないんでしょう。あれはちょっと心配です。あれは開口部なので、つまり貫通部にあたるんです。
あー、あれは隙間なんですか?本当はあかないものなんでしょうか?
はい。あれが雨漏りの原因かもしれないですね。今回見た中で一番怖いです。本来は開けないものですね。まさしくここ(直下)です。やはり関連がありそうです。
シーリング工事の重要性
今回、シール工事はしましたか?その打ち換えは塗装の職人さんが兼業して施工したシールでしょうか?それともシール屋さんでしょうか?
一応、打ち換えということで工事しました。シールは塗装する方がされていました。
なるほど。シール屋さんではないんですね。シール屋さんが施工した方がベストです。
あそこも(隙間が)開いていますね。塞がっているようにも見えるので撮影しておきましょう。
やっぱり、(先ほどの玄関と)共通してますね。開口部の部分とか。構造がちょっとはっきりしませんが、理屈ではおかしいと思います。
シール屋さんが施工しているということであればある程度安心なんですが。塗装屋が(兼業で)シールも施工したということで余計気になってしまうところがあります。つまり、シール屋さんがこれを見たらこれはまずいと言うはずです。
雨漏りがきっかけだったわけですよね。塗装工事をしようと思ったのは。
そうです。
なるほど。ありがとうございました。